フォルクスワーゲン世田谷(2)


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 (このレイアウト図はイメージで、比率など正確ではありません。ご了承下さい)


■ドイツ本社のコンセプトを導入−1階ショールーム

 メインエントランス(レイアウト図(a)位置)の自動ドアは2重。風除室を設け、ショールーム内の空調効率の保持と、気分の転換、いわば“ハレ”の雰囲気を出している。店内はガラスを多用しているため、外光が入り、明るい。そして床のタイルのカラーリングにより花道を施して、その先に真っ赤な「Lupo」が真っ直ぐ来店者を向いて展示してある(写真5)。なにか入店したお客のお出迎えにやってきそうだ。
 その「Lupo」の斜め後方の花道から少しずらした位置に総合受付が設置されている。これは、エントランスの延長から少しずらすことで、入店されたお客とスタッフの視線がぶつからないよう、プレッシャーを与えないとする配慮である。
 そして、受付の女性スタッフの満面の笑顔の「いらっしゃいませ」という挨拶を受ける。受付カウンターはウッドで緩やかな弧を描いたハイカウンター(「ハイカウンター」「ローカウンター」の解説は「オペル港北ニュータウン」を参照)で、バック類をちょっと置けるような工夫もされている(写真6)

 現在、この総合受付カウンターは、半月状に切れているが、グランドオープン時はサークルカウンターとなる。これによりお客様はいちいち受付正面へ回らなくてもよくなり、店内360度どこからのお問い合わせにも対応できるようになるという。
 さらに、右側の壁はすべてガラス張りで、その外に位置する屋内通路(写真7)への出入り口も設置されている(レイアウト図(b)位置)。実は、メインエントランスは階段で、バリアフリーは考慮してないのかなと思ったが、スロープとなったこちらの出入り口が対応はしており、屋内にあって、雨にも濡れずに出入りは容易である。

 このショールームの中心へ立つ(レイアウト図(c)位置)と、なにか至る所からの視線を感じてあたりを見渡すと、展示車すべてがこちらを向いて展示されていた。お出迎えにやってきた「Lupo」もそうだが、なにか、どの展示車も「ようこそ、私たちを見て」といって話しかけてきそうな感覚を覚えてしまう。
 ショールーム内の壁・天井・柱は白に統一し、カラフルな展示車を映えさせるカラーリングであるが、メインエントランスから入って、左奥の1カ所だけ、黄色に塗った"床の間"的な壁(写真8)(レイアウト図(d)位置)がある。ここは絵画による演出や、パネルによる情報発信をするためのスペース。取材時はイーゼル風スタンドに広告ポスターパネルを掲示していた。
 床は白のタイルを基調に、エンジ色で花道をつくり、グレーで中央から放射状にカラーリングして、展示車を強調している。そして、床を展示車のタイヤで汚れるのをカバーするシートすべてが“VW”マークが入ったオリジナル(写真9)。小さな備品ひとつもオリジナルというこだわりが、VWファンにはうれしい演出である。

 商談用のテーブル(レイアウト図(e)位置)は、エントランス側の明るい場所(写真10)に7カ所、サービス工場が稼働した後は、整備作業を待つお客様がひとときを過ごすことになる「待合いコーナー」に2カ所配置。テーブルもドイツ製で、木製の丸形、それぞれ落ち着いたグレーのイスを4脚セットしている。

 他のお客様が入店するたびに、総合受付から挨拶が聞こえるが、展示車を見ているお客様に、スタッフはすぐには近寄っていかない。
 「当社は、ご来店されたお客様に、自由にショールームを楽しんでいただきたい。これが“ノープレッシャー”という応対で、ご挨拶の後、お客様からご用件を伺うか、声をかけてもらいたいような時以外は、こちらのスタッフからは声をかけません」(林社長)。つまり、お客様には、この快適な空間で、自由にゆっくりとクルマを見てもらいたいとするもてなしだ。

 ショールームの一番奥は、待合いコーナー(レイアウト図(f)位置)。ソファー、テーブルが設置され、横にはキッズコーナーも配されている。子供連れのお客様が商談に集中できるようにと、子供を安心して遊ばせておける場所を用意したのが、キッズコーナー。これは、国産車ディーラーにも広く普及しており、いまや自動車販売店のディーラーの必須機能となっている。目を引くのは、ニュービートルの形をした木製の大型玩具(写真11)。これがキッズコーナーのアイキャッチともなっている。そこは、積み木やぬいぐるみが常備され、周囲には絵本を読めるようにとテーブルを設けるなど、子供のわがままに対応したつくりだ。

 一番奥の壁側(レイアウト図(g)位置)には、アクセサリー、メンテナンス用品、小物、VWグッズなどが展示販売されている(写真12)。什器はガラスと木を多用し、上品で暖かみのある演出である。家具はもちろん、同店の木製什器はすべてドイツ製である。




写真5:赤いLupoがお出迎え


写真6:総合受付カウンター


写真7:屋内通路の出入り口


写真8:“床の間”的な情報発信空間


写真9:こんなものまでVWマークが・・・


写真10:ウインドウ側の明るい場所に設置


写真11:大型玩具までニュービートル


写真12:グッズコーナー
 キッズコーナーの隣が、グランドオープン以降にサービスメカニックの事務スペースと、サービス(点検・修理)フロントになる場所(レイアウト図(h)位置)。同店では、ショールーム後方のサービス工場が完成すると、5ベイ(点検・修理作業時に1台のクルマをリフトアップできるスペースの単位をいう)を持ち、クイックメンテナンス作業はすべて行えるようになるという。「さらに当社は、横浜の港北ニュータウンに、板金まで行える約3,000坪の敷地を持つ集中工場を持っています。そことも連動し、お客様のあらゆるサービスに対応できる体制が整っています」(林社長)と、サービス体制も万全のようである。

 実はこのレイアウトは、「ドイツ本社のフォルクスワーゲン専売店のコンセプトで、“ピアッツァ(広場)・コンセプト”“フォーラム・コンセプト”と言って、「マーケットプレイス」をデザインモデルとしています。つまり広場にみんなが集まって来て、人とクルマが一体となってこの空間を楽しむということイメージしています」(林社長)とのこと。
 資料によると、「中央から入店されたお客様が、すべての展示車を一目で見渡せるように、中央から放射状にディスプレイエリアをレイアウト。そして人々の導線が自然に流れるように、インフォメーション、サービス、休憩、ショップなどのエリアをバランスよく配置しています。街角のマーケットプレイスのようにオープンな雰囲気の中で、くつろいだひとときをお楽しみください」とある。


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