(1)江戸東京博物館−4


■提案−まずは可能な範囲から革新を実行

 短期的には、以下の改善を急ぐべきであろう。
(1)クリンネスの徹底
 場所、方法もそうだが、その作業効率についても再検証すべきである。計画的な陳腐化、演出としての汚れと、クリンネスの手抜きの違いは、誰が見てもわかる。

(2)滞在機能の見直し
 60分間でざっと見て回り、お土産を買って施設を後にするような団体客は、そもそも滞在など考えていない。効率的な見学動線の設定が勝負であり、これには既に対策済みだ。
 そこで、これからは、個人や家族単位をターゲットに、1日を楽しく過ごせる滞在演出を徹底していく。まず、レスト機能の強化だ。「江戸東京ひろば」には、イベントの有無を問わず、和風・茶屋風のオープンカフェを誘致し、近隣住民等の憩いの場機能を兼ねる。また見学中に施設外に出て休めるような動線を設定し、その受け皿とする。高価なメニューで和食の鉄人を標榜する飲食店は不要だ。広い施設空間を街空間、例えば銀座の歩行者天国になぞられて、テイクアウト店と仮設テーブルでよい。また、高齢者専用のレストルームとして、都電全盛期(1950〜60年代)の車両を展示・活用するのも一考であろう。
 ただし、子供連れが多くては、全員がエチケットを守って見学するわけではないから、騒がしくて落ち着かないという層も確実に存在する。親にとっても子供が周囲に迷惑をかけるのではないかと常に注意を払っていては見学どころではない。そこで、休館日の数日を特別に「家族ディ」のような、子供連れファミリーだけを対象に優遇するイベントを用意してはいかがだろうか。

(3)弾力的な時間設定
 できれば午後8時閉館を恒常化する。さらに、「江戸東京ディ」として、24時間オープンする等は無理だろうか。2000年の大晦日と正月は“「江戸−東京」21世紀”的なイベントに組み込めるだろう。

(4)民間とのタイアップ
 展示企画の半分は、民間とのタイアップである。この手法を常設展示に活用する。例えば、日本橋や丸の内に見られるように、旧財閥と江戸・東京の関係を再確認できる展示は、都市工学的かつ経済学的に必然性が高い。ゆえに、この伝統を現在に引き継ぐ企業に、展示についての一定の負担をお願いするといった手法である。あるいは企業対象に寄付等の仕組みを用意してはどうだろうか(基金化すればよい)。

(5)コミュニケーション・チャンスの拡充
 現在の広報・宣伝活動は、企画展示のタイアップ先との連動(例:NHK)や『江戸東京博物館NEWS』『常設展示・今月のみどころ』等の冊子類の発行が中心である。マスメディア等の利用はほとんどない。これでは寂しい。もっと、周知・認知できるチャンスを与えるべきであろう。例えば東京都の身内であれば、電車・バス等の交通広告がある。この4月からは幸いなことに、デザイン性をアピールできれば、都バスの全面ボディ広告が可能になっている。また、都電の複数車両を同館専用の移動展示室的な位置づけのアド・トラム化するのはどうだろう(マスCMの数十分の一かのコストで可能)。



図16 『江戸東京博物館NEWS』




図17 『常設展示・今月のみどころ』




図18 分館の江戸東京たてもの園で発行している『江戸東京たてもの園だより』

 一方、規模的に短時間の見学体験では消化不良に陥りやすく、それがマイナス評価として口コミされる負の循環だけは切り取っておきたい。何度も訪れてもらい、高い満足を得てもらう。現在でもリピート率は小さくないのだから、この層を活性化させ、ひいてはプラス評価の口コミソースになってもらおう。そのため、回数券割引や、ポイントサービス、定期券等のリピート優遇システムを導入する。

 なお、同館では2001年より『友の会』制度を導入する。有料だがこれに参加すると、展示等で自分の企画が実現できるように場所と人が提供される。これにより、リピーターの囲い込みはもちろん、展示内容に様々な視点が反映され、その充実と多様化が図れるものと期待されている。
  
 日本には同様の課題に直面する歴史資料館が少なくない。その施設運営について、江戸東京博物館が新しい成功モデルを示してもらいたい。首都機能が移転しても、これまで江戸と東京が果たした役割と同様に、この分野についての先導する存在となってもらいたい。
(取材日・2000年4月7日/14日)

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