5.インプレッション(3)

○わかりやすく、興味を覚えやすい資料展示

 トロッコ電車に乗って地上に戻る。「黄金資料館」である。さほど広くはないが、製錬技術、金の性質、利用法など金のことなら何でもわかる「金の知識コーナー」のほか、串木野鉱山の歴史、串木野鉱山の全体がわかる模型などもあり、企業の資料館ともなっていて、内容は充実していた。

 また、子供だけでなく大人でも楽しめる展示も多い。例えば「もし金の糸で反物ができたら・・・?」「もし金箔の畳ができたら・・・?」は面白い。織機に金の糸が組まれ、本当に金色の布が途中まで織り上がっていた。そこまではまあ誰でも考えつく。しかし、金の畳というのはなかなかすごい発想ではないだろうか。また、ガラスに手を突っ込んで本物のインゴット(金の延べ棒)を実際に持つことができるコーナーもある。12.3キログラムのインゴット一本で1,800万円相当とのことだ。金の重さを実体験できるため、人気のコーナーとなっている。

○好評の「純金メッキ実演コーナー」

 資料館の出口はお土産コーナーに直結していた。金と言えばアクセサリーということで、アクセサリーが数多く販売されており、1,000円と安いものから、立派なガラスケースに入った高級なものまで揃っている。特に高級品の売り場の壁には「三井金属」のロゴがあり、重厚感というか、本物感というか、よく見なくても高そうなのがわかるので、ここは通り過ぎて楽しみにしていた「純金メッキ実演コーナー」へ向かう。
 お土産売り場の片隅にあるのだが、ここでは500円で10分程度待てば、小物類を金メッキしてくれるのである。取材の際にお話を聞いていたのでこればぜひ、と考えていたのだ。こちらではすでに名物と言ってもいい金メッキの名人は、白衣を着用し、大学教授のような貫禄である。我々がメッキを希望するマンションのカギとクルマのカギを渡すと、何種類かの薬品に規定の時間ずつつけ込んで、手際よく見事にゴールドキーとなった。どこにでもあるカギがゴージャスになってなんだかうれしいような恥ずかしいような気分である。

 「純金メッキ実演コーナー」は大変人気があり、後から物を送ってきてメッキをして送り返して欲しい、という依頼が来ることもあるそうだ。実演コーナーにはお礼の手紙やテレビの取材を受けた際に撮った芸能人とのツーショット写真などがたくさん飾られていていたのが観光地らしくてほほえましい。
おみやげには「金箔カステラ」と「金山羊羹」を購入した。「金山羊羹」はインゴットの形状をしていて、坑道の中の展示を模して「黄金のピラミッド」のように積み上げられて売られていた。

○テナント誘致により屋外空間を整理する計画

 外に出て向かいにあるレストランで食事をすることにした。地底見学の入り口の建物とレストランの間にあまり広くない広場があった。ここは屋外ゲームセンターである。屋外だが屋根があり、その下に小さな子供向けの遊具がいくつも置いてある。うまく活用されているとは言い難いスペースである。ここは、いずれ遊具を撤去し、テナントを誘致して何か別のスペースに変更する計画だという。

○団体の予約で準備に多忙なレストラン

 レストランは団体対応を考慮しているためかなり広い。我々が訪れた際にはけっこう人が入っていた。また、奥の席は団体を迎える準備がされていて、テーブルの上には番号札が置かれていた。ウッディな内装で、天井からグリーンを垂らし、開放的な雰囲気である。和食、洋食、麺類などかなり幅広いメニューで、"らしく"金粉料理も用意されている。
 レストランの玄関に掲げられた「歓迎」のパネルには、その日だけで6組の団体客が訪れることになっていた。

 「南九州完全一周3日間」、「ぐるっと南九州4日間」、「桜島龍神の湯と砂蒸し指宿温泉の旅」など、どれもバスツアーと思われるネーミングである。これでもほとんど1階のみで対応できるため少ない方らしい。多いときはレストランの2階も使用して対応に追われるという。


6.活性化のために
 
○団体中心の営業から、ホームページは「準備中」
 マインパークのほとんどは、ホームページを立ち上げて情報提供や宣伝を行っているが、ゴールドパーク串木野には残念ながらまだ用意されていない(2002年7月時点)。観光協会や行政の観光紹介ページ等で簡単な概要を掴むことは可能だが、それにしてもあまりに提供している情報が少ない。実は、作成する予定で外部に委託していたが、その会社が傾いてしまい頓挫してしまったのだという。
 しかし、現在のように団体中心、旅行会社相手のビジネスであれば、それほど必要性を感じていないのかもしれない。行動を起こす前に、Webで情報をチェックするのはすでに習慣となって生活者の間に定着しつつある。これが団体客、あるいはデジタルデバイド層が多い地方の中高年になると、ゴールドパーク串木野へ寄るとなって、このような情報活動をする手段はインターネットではなく、添乗員または彼が用意した案内パンフレットで決着できる。
 それでも、「九州西海岸」のような新しい観光行動圏をプランする田畑氏である。自社の、印刷媒体をデジタル化しただけのサイトを作るくらいなら、こうした新しい切り口の.comをプロデュースしてほしい。

※2003年8月現在はホームページがあります。

○自社資源とターゲットを相対させての見切り

 これまで、多くのマインパークを見てきたが、およそ集客という経営の根幹において、ターゲットを設定し戦術を考えパートナーシップにより具体化を図っていたのは、ここが初めてである。もちろん、第三セクターののんびり感とは正反対の緊張があるからこそなのだが、それでもしない人はしないし、できない組織はすーっとできないものだ。
 団体客に見切るのは非常にリスキーのように感じる。しかし、ビジネスは見切りが勝負だ。自社資源を相対評価したときに、それだけでは生き残れないと見切れば、あとはパートナーシップで自社のリソーセスを高めればよい。
 田畑支配人の地域プロデューサー的発想と行動は、こうしたマネジメントの結論のように思える。施設単体では魅力が乏しくとも、エリア全体の中で毛色の変わった観光ポイントとしてネットワークで生き残っていく。集客施設の重要な活路である。




「黄金資料館」は小規模ながら豊富な展示





金の糸で織られた反物(上)、金箔の畳(下)



「純金メッキ実演コーナー」で鍵を金メッキ



土産に購入した「金箔カステラ」と「金山羊羹」





遊具が置かれているトロッコ電車乗り場とレストランの間にある広場。いずれ違うスペースになる予定



レストランは団体客の迎える準備が整っていた



レストランの前の歓迎ボードには6団体もの名前



箸袋には、ゴールドパーク串木野の概要とお土産品の紹介が書かれている



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