4.トロッコ列車に乗り込み、坑道探検へ出発

 ■坑道マップ




 ここの坑道探検は、トロッコ列車に乗って坑道へ入り、地中の終点で列車を降りて、坑内を見学。そしてまたトロッコ列車に乗って引き返すという“ミニ・トリップ”になっている。したがって、トロッコ列車が坑内を往復するまでの約30分、勝手に坑道に入ることができない。そこで、トロッコ列車の定員が入坑できる定員となる。我々の前の組が戻って来るのを待って、出発することにする。

 坑道の入口は、先ほどの砂金採取コーナーのさらに上に位置し、階段を上って行く。
 鉄道好きの編集長弊誌、鉄道施設シリーズ参照は、トロッコ列車を楽しみにしていたらしく、足取りも軽やかである。着いてみるとそこにはすぐ坑道入口がある。その白壁には「高玉金山」と掘り込んだ石碑を埋め込み、トンネルを丸太で縁取った立派な装飾を施している(写真8)。中からは地下水が川のように流れ出している。その流れをたどると、先ほどの「黄金滝」につながっている。

 トロッコ列車(写真9)は、トンネルから出てると約90度にカーブした先が乗り場で、そこから折り返す。
 機関車はフクロウの顔を施すなど、子供向けの演出をしている。実はこの列車、老舗の坑内車両メーカー製で、電気駆動車に8人乗り5両の客車を連結した、7両の立派な編成であった。
編集長が真っ先に乗り込み、取材班の貸し切り状態。運転手が安全確認を行い、出発進行!

 坑道に入ると、走行音が反響することもあり、意外とうるさい。ガイドを兼ねる運転手がマイクを使い、なにやらアナウンスしているのだが、よく聞き取れない。
 外光が届く辺りのトンネルの壁と天井は、丸太で補強した装飾(写真10)で、古いトンネルという演出。そして、外光が届かなくなるあたりには、ゴツゴツした岩肌が露出(写真11)し、両側の壁には、カラフルな豆電球を一直線に奥まで引いて(写真12)、トンネルの神秘性をアピールする。
 この演出は、“探検の始まり”という雰囲気を盛り上げるのに、効果があると見る。さらに途中のいくつかの横穴には、ブラックライトの照射で光る絵やボールのようなものがある。意外にトロッコ列車のスピードは速い。
 その時点では何かわからなかったが、後からの撮影データを確認すると、ブラックライトに発光する塗料を塗った岩肌や観音の絵、ボール(写真13)と判明。全く鉱山とは無関係で、安易に暗闇を利用した幻想的な演出に自画自賛の模様である。
 列車の旅は3分ほどで終わり、終点に到着。今度は徒歩で地下の坑道をめぐる。

 ここではテープによる説明が自動的にスタートする。まずはこのトロッコ乗降場についてだ。それによると、ここは高玉金山三大鉱床群の一つ「青木葉抗」の中心部(写真14)で、岩盤がしっかりしているため、鉱員の休憩所にもなっていたところだという。確かに、トロッコ列車が停車し、乗り降りが可能なくらいのスペースが確保されるほどの広さがある。

 観光坑道の床はコンクリートで整備してあるが、そこから横に伸びる坑道は床も岩肌むき出しである。
 トロッコを降りてすぐ隣にあるのが「漏斗トロッコ積込ヶ所」(写真15)。トンネルを丸太で補強し、当時の軌道(レール)が2本に分かれ、それぞれ奥へ続いている。これにより、大正時代からトロッコによる鉱員、鉱石やズリ(掘り出した土石)の搬送が行われていたという歴史が、非常に良くわかる。さらに天井には錆び付いた“削孔用エアー管”(写真16)が残っており、非常にリアルである。

 さらに奥へ進むと、頭上30m、地下230m掘ったという同施設最大の「大竪坑」をはじめとする数カ所の採掘跡を見ることができる。それらすべては “シーリングゲージ採掘法”(垂直方向に上向きに採掘し、下に採石を落としていく採掘法。細倉マインパークの“シュリンケージ採掘法”と同じ)により、丸太で足場を組み、照明が届かないほど上へ亀裂のように掘り進まれた(写真17)跡だ。
 そのほか、その大竪坑の岩石や土砂を運搬するエレベーターを巻き上げるケーブルが通っていた坑(写真18)、立ち入ることはできない約1,300mも横に伸びる坑道入口(写真19)、火薬庫跡などを見ることができる。音声の解説に加え、見所ごとに、トロッコの運転手が、当時の苦労や鉱物の話などで詳しくガイドをしてくれ、とてもわかりやすい。

 以上、一通り見終わると、トロッコ列車乗り場に集合し、揃ったところでトロッコに乗り込む。運転手の安全確認後、今度は外へ向かって出発し、元の現実の世界に帰ったところで、探検は終了した。
 観光坑道として、約700mを一般公開しているに過ぎない。それでも徒歩で探検部分できるエリアは、余計な装飾、演出はなく、リアルに鉱山の厳しい仕事と歴史を体感することができた。



写真8:
入口は立派な装飾



写真9:フクロウの顔をしたトロッコ列車



写真10:丸太で古い感じを演出



写真11:ゴツゴツした岩肌が見えてくる



写真12:カラフルな豆電球で演出



写真13:また、無関係な演出



写真14:「青木葉抗」平面図



写真15:漏斗トロッコ積込カ所


   写真16:当時のままの掘削用エアー管        写真17:生々しい採掘跡
       

       写真18:エレベーターケーブル用抗     写真19:立ち入ることはできない坑口
               




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