夕張・石炭の歴史村(11)

5.訪れてのインプレッション(2)

(2)石炭博物館
旧炭鉱をイメージさせる大型機器がシンボル

 再び夕張駅、商店街を通り、歴史村のエントランスに到着し、同村のメイン施設「石炭博物館」(以下博物館)へ。このあたりは商店街からそれほど離れていないのだが、山肌や村内の通路横にはまだ雪が残っている。
 建物の外観は、茶色のタイル張りで、横に大きな採炭用機械のやぐらのようなものに「石炭の歴史村」と大きく表示して、ランドマークの役目をしている。遺構の上手な使い方だなと感心していたら、新たにこの施設のために造ったものだという。北海道は雪が多いのは周知の事実だが、一旦廃墟になると、雪の重みやたたきつける吹雪で崩壊は加速するそうである。そのため、大型機器風のランドマークとして新たに造ったのだという。しかし、すでにオープンから来年(2003年)で20年経過しているためか、錆などの腐食や傷みが遺構のように見え、風格さえ感じる。

○1階エントランス:映像で「夕張と石炭」を把握

 早速中へ入ると、チケット確認の受付がある2階まで吹き抜けのエントランスホール。窓、壁側に大型エアコンプレッサーや大炭塊(石炭の巨大な塊)、炭鉱夫の格好をしたマネキンが「ようこそ」と書いたパネルをもって展示してあり、雰囲気を盛り上げる。そして順路の左側の壁の上部に200インチ画面スクリーンが設置してあり(前図)、ここでまず「炭鉱(ヤマ)の記憶〜映像でつづる石炭と夕張の歴史〜」のビデオで予備知識を頭に入れる。少々政治色を感じるが、実際の作業風景などを中心としたドキュメンタリー構成で思わず見入ってしまう。時間にして約10分の上映だが、上手くコンパクトにまとまった作品であった。

 順路に沿って奥へ進むと、まず目に付くのが、巨木の森。これは石炭の元となる約5千年前、新生代古第三期「メタセコイア」の実物大復元展示である。もちろん、この巨木がどのように石炭となるのかパネルで生成過程が説明され、非常にわかりやすいコーナーである。関連としてその時代の化石も展示してある。

○地質分析はわかるが、自然の保護・紹介はオーバー

 次はその石炭と夕張の関係を説明するコーナー。夕張の石炭層を最初に調査、発見した説明や地下での石炭層の状態などを説明するパネルと、実際坑道で採れた石炭の実物を展示している。その横では一変して閉山後のズリ山(掘るときに出た泥土の山)跡や廃墟となった炭住跡に、しっかりと自然再生した夕張の植物をパネル展示している。“自然を大切に”と“地元の植物紹介”を炭鉱に引っかけて言いたいのはわかるが、少し無理があり、浮いたコーナーとなっている。スペースの制約と他コーナーのかねあいで、この場所になったのかもしれないが、このコーナーテーマはエンディング向きであろう。

 1階の展示は以上で、エントランスホールの階段で2階へ・・・とホールへ出たところに、順路を区切るようにショーケースを設置してお土産を売っている。ショーケースの向きもこちら側なので、ホールに向けてではなく、この階段で上がる時点で来館者にアピールしている。

 お土産は最後でいいだろうと思いつつも見てみると、石炭の実物と、「塊炭飴」と書いた黒飴を販売している。「試食してください」とショーケースの上にあった飴を一ついただいたが、普通の黒飴であった。
 これはお年寄りを中心に人気上々だという。また石炭も見たこともない子供には珍しい土産であろう。

 どちらも非常にいいアイデアであるのだが、食べ物と石炭をくっつくように並べて陳列するのはちょっと考えものである。もちろん包装しており、気分の問題かもしれないが、今やスーパーやコンビニでも食品とサニタリーや洗剤系商品は別の袋にする心遣いが一般的な時代なのである。

○2階エネルギーコーナーには往年の「石炭の樹」

 2階のスタートは、「エネルギー」についてである。現在の産業において利用されているエネルギーの変遷をパネルで紹介。透明パネルに説明書き、そのバックにそれを表現したイラストを施した立体的な展示方法である。
 その隣は、もう一つの「石炭の樹」。これは昭和40年代ぐらいまでの教科書には必ず載っていた、石炭から作り出される化学工業製品の系図である(現在はそれが石油に取って代わっているため教科書から姿を消したらしい)。ここではそれを巨大なパネルにして、各製品の場所にその実物が入っているという懲り様である。

 そして次に、その石炭の燃料以外の具体的な使われ方の説明パネルとその製品の実物展示となっており、ストーリーができている。これは見るだけで非常に理解しやすく、あらためて石炭の採掘を通じて得られた技術が、現在の石油化学につながっていることがわかる。また、このコーナーは、独立したスペースとして仕切られ、壁面だけを使い、他に目移りせずに集中できることも理解が深まる要因かもしれない。

 順路に沿って進むと、壁面にエネルギーの変遷を時系列にした「エネルギー年表」の展示がある。長さは5m以上もあり、非常に読み甲斐がある資料だ。イラストを入れ、文字を白抜きにするなど、読みやすくする工夫がみられる。
 その年表の先には石炭を液化、ガス化する生成プラントの模型を展示。内部のパイプを色づけし、各部名称も表示されて、わかりやすくしようという意図はわかる。しかし模型の足下にあるプレートには、メーカーが発注主に向けて1/25で作成した模型と表示がある。どのような使い方をしていたのか説明がないと、単なる記念品の展示で終わってしまう。

巨大オブジェがランドマークの外観




石炭の元となる巨木を再現


1階レイアウト図(ガイドブックより)


アイデアはいいのだが、陳列に問題が


『石炭の樹』を示す立体的なパネル展示


5m以上続く「エネルギー年表」


生成プラント模型と付属のプレート


次ページ 訪れてのインプレッション(3)



 | HOME | Report | Book | About Us | New |

 © Fantastics Inc. All Rights Reserved 
このページに掲載の記事・写真の無断転用を禁止します。

お問い合わせ