夕張・石炭の歴史村(5)


2.空間(1)
レジャーで集客、石炭をやさしく解説


 夕張市は、「炭坑」というテーマにした総合レジャーランドを計画・構想・開発するに当たり、以下のような状況分析を行い、課題を明らかにした。

●炭鉱は3K(きつい、汚い、危険)の職業の代表格で、事故があると100人単位で亡くなってしまうなどから、いいイメージはない。(実際に働いていた人の中には、思い出したくもないという人もいるという)

●産業革命以来、石炭の功績は大きいが、最近では石炭を見る機会もなく、そもそも石炭とは何か知らない、どこでどうやって活躍しているかなどわからない人が多い。

●炭鉱の坑道は、金属鉱山と違いガスが発生するという危険性がある。

 このような課題を解決するため、歴史村のメイン施設である「石炭博物館」は、パネル展示、映像、人形による再現、ミニチュア模型などによるわかりやすいインターフェイスに配慮するとともに、坑道を模擬坑道にするなど、安全性を高めている。
 また、より集客力をアップするために、「炭鉱」だけにこだわらない、アミューズメント施設を設置して、総合レジャーランド的な施設を目指している。



○51haの敷地に15の施設が点在

 歴史村のゾーニングを紹介する。
 歴史村へのアクセス道となる「道道夕張・岩見沢線」は、深い山間を南北に走っている。その西側には、約30haの敷地規模の「花とシネマのドリームランド」と、その北側には「めろん城」(農産物加工製品の製造販売および夕張メロンブランデー醸造研究所)、さらにその東側に約51haの敷地で「歴史村」が位置している。

 北海道は、広大で、どこまでも平坦で・・・という景観が多くそれがまた魅力にもなっているのだが、ここは珍しく両側に山が迫り豊かな緑に囲まれ、また敷地を縦断するように「シホロカベツ川」が流れている山間地の景観で、とても炭鉱跡とは思えないほどの美しい。実は平成元年(1989)に「北海道まちづくり100選」(北海道、北海道新聞、NHK主催)にも選ばれている。

 この広大な敷地の中に、アミューズメント施設「アドベンチャー・ファミリー」を1施設と換算(この中にアトラクションが多数ある)して、15の施設で構成されている(表4参照)。そのうち、石炭・炭鉱関連施設の「石炭博物館」(図中1)、「炭鉱生活館」「生活歴史館」(同2)の3施設を含む展示博物館が7施設ある。

 敷地内のレイアウトは、まず約20haの「ローズガーデン」(図中6)を中心に、北側に「アドベンチャー・ファミリー」(同9)、南側に「ロボット科学館」(同3)、「知られざる世界の動物館」(同4)、「ゆうばり化石のいろいろ展示館」(同5)、「郷愁の丘ミュージアム」(同10)を配した構成となっている。敷地の形状は南北に約1.5kmと細長い形状で、「アドベンチャー・ファミリー」まで南側のメインエントランスから徒歩で向かうと、20分近くかかるため、北側にも駐車場と入口ゲートを設けている。

 なお、また、水上レストラン「望郷」(同7)前から「アドベンチャー・ファミリー」まで、ミニSL「軽便鉄道」(図中8)が約5分で結んでいるので、子供連れやSLファンは利用するのも手である。
 この他、飲食施設や物産館等の飲食・物販機能、「銘石園」や「ろまん橋」などの景観の造り込みなども有し、1日滞在型の総合レジャーランドを目指している。また歴史村のパンフレットに「探索モデルコース」が記載されているが、「アドベンチャー・ファミリー」を1施設と考えて、10施設を周遊するようになっている。これは丸1日でも全ては無理かもしれない。

 メインエントランス近くの、レンタサイクル&宿泊施設の「サイクリングターミナル黄色いリボン」を利用すると1泊2日滞在も可能という。また、歴史村内の「石炭の歴史村ファミリーキャンプ場」は利用無料のため、アウトドア志向のファミリー客はもちろん、道内をキャンプツーリングするライダーにも好評を得ている。



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