5.インプレッション(1)

 事務所で田畑和彦支配人にお話を伺った後、さっそくトロッコ電車に乗って坑内へ向かう。地上ステーションにはブルーの車体に黄色の屋根が付いた可愛らしい電車が待機していた。トロッコ電車「マインシャトル」号である。
 ホームはエンジとクリーム色の壁面に間接照明が並び、天井から四角錐の照明がつり下げられていて、モダンな印象である。このホームはそれなりにコストをかけて作られているのだろうと容易に想像できる。導入部はこれから坑道へ向かうとはイメージしにくいデザインで、地下とのギャップが却っておもしろく感じられた。
この日は雨が降っていて、ホームから見える「砂金取り体験」には誰もいない。大きなソテツの木が風邪に揺れるばかりである。

○地下ステーションは坑道の雰囲気十分
 「マインシャトル」号に乗り込んでいよいよ出発である。約700m走ると、地下ステーションに到着する。車内では女性の声で坑内禁煙などいくつかの注意を促すが、あまり多くを語らない。
 途中のトンネルの内部はそれほど手を加えていない様子で、真っ暗な中をディーゼルの轟々とした音を立てて進んでいく。他のマインパークでは、とかく壁に色とりどりのランプを付けたり、岩を光らせてみたりと電光装飾に走ってしまいがちだが、こちらはとにかく真っ暗な分、リアリティに溢れている。
 あっという間に地下ステーションに到着。天井も柱も岩肌がむき出しで、岩のかけらが人に当たらないように張ってあるネットがリアルで、本物の坑道を利用していることが実感できる。
 立派に整備されたホームには、かなり多くの人が立っていて、トロッコ電車の到着を待っていた。どうやら団体客が来ていたらしい。我々が降りると続々とトロッコ電車に乗り込み、地上ステーションに向かって出発した後は、あたりは急にしんと静まりかえってしまった。

○入坑事務所の再現はシンプル
 いよいよ坑道に入る。ここから先は時間の関係で近道をした所もあり、必ずしも順路通りになっていないことをご了承頂きたい。
まずは「火薬類取扱所」がある。プレハブ建てでカウンターのような窓口が2つ付いており、中には火薬が入った袋や、袋詰めされたダイナマイトなどが棚に並べられていた。ここは岩盤を崩すための火薬類を受け渡しする場所で、厳重な保安管理がされているのだそうだ。といっても特に厳重そうな雰囲気はなく、他のマインパークでは事務所の再現には欠かせないマネキンも置いてなく、至ってシンプルな展示だった。頭上から音声による解説が繰り返されていた。

○リアルなマネキンの表情から伺える過酷な作業
 暗い坑道を先に進むと大きな機械とヘルメットをかぶって作業をしている等身大の人形が設置してあった。これは「掘進機械」でレールを敷いて鉱石を運び出しながら掘り進むための機械で、一番奥がロッカーショベル、次がグランビー鉱車、手前にバッテリー電車を連結している、とある。砕いた鉱石をショベルで鉱車に積み込んで電車が引っ張って運び出すようになっている。

人形は西洋風マネキンではなく、ちゃんと日本人の容貌で、顔も作業着も汚れていてなかなかリアルである。しかも表情がかなり疲れていた。大変な作業なのだろうなあ、と同情してしまう。


○音声解説は共鳴がひどくマグシーバーが必要
ここでは女性の声で解説が流れ続けていたが、他の場所から流れてくる男性の解説とだぶってしまって聞き取りにくい。解説の前にチャイム音が入るのだが、あっちでもこっちでも"チャラーン"と鳴っていてうるさいくらいだ。マインパークの何カ所かで使われていた「マグシーバー」(無線の形態解説機)等の導入を一考されたい。
 この先には高圧100馬力のモーターがロープを巻き上げて、人を運ぶ人車や鉱石運搬車を移動させる「巻揚機」がある。ここでも人形がたった一人で、大きな機械の操作を任されていた。解説の「ちょうど釣り竿のリールの役目をしていて、どんな大物が釣れるかを楽しみに毎日せっせと働いています」というコメントが笑いを誘う。リールにつながるワイヤーは天井に開いた穴を抜けてずっと高いところへ吸い込まれていた。

○バリアフリーに対応した順路設定
 先へ進むと左に上り階段があったが、直進方向にも道が続いていて鎖が張られていた。車椅子の方や階段の登り降りが困難な方は、鎖をはずして直進もできるようになっているのである。この先の大斜坑で合流できるようになっている近道である。こういった道を用意していることには好感が持てる。また、同パークの入場者数の7割を占める団体客に対応するため、近道の用意があるのも、よく考えられた配慮である。我々はもちろん順路通り左の階段を登っていった。


 昭和59年まで使われていたという「運鉱トロリー電車」などを見ながら先へ進むと、水が流れ落ちる音が響いてきた。そこには小さな滝があり、滝壺の中に立てられた台座の上には、なんと黄金の観音様がまばゆい光を放っていた。高さ1メートルにも満たない小さな観音様だが、神々しい光を放っていた。そして小さな賽銭箱もちゃんと置かれていた。軽く手を合わせて先へ進む。



取締役支配人 田畑和彦氏


トロッコ電車「マインシャトル」号。


地上ステーションはモダンな造り


地下ステーション。柱となっている岩盤には迫力


火薬類取扱所。解説板以外は装飾もなくシンプルな展示


「掘進機械」を操る人形。等身大で汚れた作業着を来ているところがリアル


疲れた表情にリアリティ、展示された人形



階段がつらい人は鎖を外して近道ができる


黄金の観音様の後ろには滝が轟々と流れている


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