○「JapaneseDNA」×「Symple&Clean」―――施設・サービス概要

■デザイン
 2つのギャラリーとも「Simple&Clean」をデザインの基本コンセプトとし、クルマを最も美しく見せるという観点から空間の色調は白ないしシルバーで統一している。また、同社がブランド・アイデンティティ(BI)の要素の一つとして「Japanese DNA」を掲げており、日本のイメージを醸し出したディテールが用いられている。例えば、壁面の格子は和室の欄間を、銀座ギャラリーの外壁の溝は京都の寺院に見られる石庭(龍安寺の枯山水など)をそれぞれイメージしているといったものである。
和室の欄間をイメージしたという、
本社ギャラリーの壁面デザイン


石庭のイメージからデザインされたという
銀座ギャラリーの外壁



 ちなみに、本社ギャラリーは壁と床が白一色であるため、売れ筋である白いクルマを展示した場合に白い空間の中で展示車が映えるのだろうか、という心配もあったそうだ。これは、白熱灯を使うなどライティングの工夫で対応している。なお、ライティングはクルマの配置に合わせてその都度設定し直すとのことである。
 これが来場者にとってベストかどうかはわからないが、全ての人に受け入れられるものにしていくとどうしても最大公約数的な空間となりがちである、との判断から、空間の美しさを見ていただくことを最優先にこの方法を貫いていくとのことである。
 デザインは文田昭仁氏が手がけている。今後、モーターショーなどのイベントや対外的なデザインは全て同氏の手に委ねるという。例え世界のどのモーターショーを見ても、日産ブースはこれらギャラリーと統一されたデザインが味わえるようにしていくのだそうだ。

■シャトルバス
 本社ギャラリーと銀座ギャラリー間はシャトルバスが送迎している。運行は毎週土・日曜となっている。銀座ギャラリーはスペースに制約があり、土・日ともなると1日に3,000〜4,000人もの来場者で混雑するのに比べて、ゆったりとしたスペースのある本社ギャラリーはオフィス街立地ということで周辺の人通りが少なくなってしまう。そこで余裕のある本社ギャラリーへの、誘客策として運行を行っているのだという。努力の甲斐あって、徐々に認知度が上がってきており、シャトルバスの乗車率はアップしているという。

■テストドライブ
 広くてゆったりできるのが本社ギャラリーの特徴ではない。土・日にテストドライブとして試乗体験を用意している。無料で30分間、銀座・築地近辺を自由に試乗する事ができ、添乗員も同乗しない。専門のアドバイザーを配置し、試乗するクルマの説明はもちろんのこと、銀座周辺の案内、交通情報などをアドバイスしており、地図やチャイルドシートも用意されている。
 試乗車には旬のクルマを選んでおり、現在はスカイライン、プリメーラ、エクストレイルの3車種が対象となる。なお、プリメーラとエクストレイルは今のところ試乗枠の半分が埋まる程度だが、スカイラインに人気があり、いっぱいでお断りすることもあるという。
 なお、デザイン優先の発想から、どちらのギャラリーでもこうした空間にありがちな看板やPOPの類は全くと言っていいほど置いていない。例えば、従来であれば「無料試乗実施中」といった表示をしていたところだが、敢えて避けている。造形的に完璧な空間をじゃましてしまうものは一切置かない、というルールを守っているのだ。店内に試乗の案内やシャトルバスの発着所などについての表示も同様で、これらはアナウンスやWebで案内を行うことで対処している。

■カフェ、ウォーターサーバー
 本社ギャラリーにはテイクアウト方式のカフェコーナーが設けられている。コーヒーを片手にクルマを見て回ったり、デジタルギャラリーを見ることができる。
 カフェは「Tully's Coffee」が運営しているが、店内にはTully'sのロゴは全く見あたらない。ここは日産ブランドの聖地であるため、特定企業の看板が入ってしまってはまずい、というのがその理由である(カップにはロゴが入っている)。
 ウォーターサーバーは本社ギャラリー、銀座ギャラリーに各2台設置しており、来場者はおいしい天然水を自由に飲むことができる。「銀座一おいしい水」だと自負しているとのことである。このサーバーのデザインもギャラリーと同じく文田氏が手がけている。また、ウォーターサーバーのカップには最初、水を扱う企業のロゴが入っていたが、これは消してもらったそうだ。デザインに対して徹底したこだわりの姿勢がここでも見られる。

「Tully's Coffee」提供のカフェコーナー。さりげなく「CAFE」と記されている(本社ギャラリー)
おいしい水が飲み放題のウォーターサーバー。本当にとてもおいしい。

■イベント
 現在行われている「NISSAN DNA」展は、日産のオリジナリティ、起源から最近の動きまでを伝えていくために、このイベントはブランドを培ってきた往年の名車を展示し、同社が伝統として持つ強みを商品を通してより一層感じていただくことを目的としている。イベントでは、2001年7月から9月までの期間を3つに分けて開催されている。
 7月20日から8月9日までは「1st Generation」と題し、日産の主要車種の初代モデルの展示を行った。本社ギャラリーでは日産初号車、初代ブルーバード、初代セドリックを、銀座ギャラリーではダットサン11型フェートンを展示している。(編集長は初代シルビアのパーフェクトな姿を見て、"子供のころ、カタログをもらいに行った"と狂喜乱舞していた)
 8月10日から8月28日はモータースポーツをテーマに、国内外の各レースで活躍した歴代のモータースポーツ車両を展示している。本社ギャラリーではニッサンR381、フェアレディ240Z、ニッサンR390GT-1などを、銀座ギャラリーではJGTCスカイラインGT-Rを見ることができる。
 8月29日から9月9日までは「NISSAN DNA Epoch(エポック)」と題して、日産車歴代車種の中で特に話題を集めた車両を展示する。シーマやスカイライン、Be−1などのほか、電気自動車が見られる。
 取材時(2001年8月上旬)時点で、秋以降のイベント内容はまだ決まっていない。

日産初号車。年輪を感じさせるデザイン



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