フォルクスワーゲン世田谷(3)

■2階はギャラリー風ショールーム

 「ギャラリー風の演出でショールームとはひと味違った空間にしました」(林社長)という、2階へ案内される。
 階段を上がって、ショールームまでの廊下の壁(レイアウト図(i)位置)には、昔から定評のある歴代のVWの新聞・雑誌広告が額縁に入って飾られ(写真13)、展覧会風に演出。その内容、デザインの楽しさに、思わず見入ってしまう。
 そこを通り過ぎると、前の環状八号線から見えていた色違いの「ニュービートル」が3台展示(レイアウト図(j)位置)してある(写真14)

 この空間は、天井までガラス張りで非常に明るく、壁・柱は白で、床は大理石風タイルで高級感を漂わせている。天井のガラスからは、サインとなっている大看板のVWロゴが迫っている(写真15)
 「ニュービートル」の間には、木目を活かしたシックなテーブルとイス(写真16)の2セットが配され、ゆっくりとくつろげることに抜かりはない。



写真13:歴代の広告を展示


写真14:カラフルなニュービートルを展示
      
写真15:天井には、ロゴマークが見える            写真16:シックなテーブルとイスを設置

■ショールームで “結婚披露パーティ”!?−イベント

 同社は、以前から、自店で購入していただいたお客様だけを対象に、ショールームで音楽会やミニコンサートを開催する等のイベントを行ってきた。
 「ただ『新型車が発表されたから、見に来てください』ではなく、せっかくお越しになったのだから、クルマを見ること以上にお客様に楽しんでもらいたい。また楽しいことが体験できるお店ということを認知してもらいたい」(林社長)からである。その内容だが、お店のある商圏地域にお住まいのお客様が楽しめるもの、という大まかな決めだけで、基本的には各店舗が独自に企画し、実施している。
 「これまでに、能・狂言など、様々なイベントを開催しましたが、究極はウェディングではないかと考えていました。ところが、この世田谷のプレオープニングにお越しいただいた若いカップルから、このショールームで結婚式を挙げたいというご希望を伺いました。もちろん二つ返事で承り、11月に実施が決定しています」(林社長)。なんと、結婚式の披露パーティをカーディーラーで、しかも無機的なこのショールームで開催するというのである。そのカップルは、二人ともニュービートルの大ファンということもあるが、そう希望しても不思議ではない雰囲気をどこかに感じる店内にいると、そのパーティの様々な演出アイデアを「こうしたい、これもいい」などと、楽しそうに語っている林社長を誰が“生き馬の目を抜く”クルマ販売業のトップと思えるだろう?さらに「2階のショールームスペースは、地域の婦人会やカルチャースクール、サークルの展示会や会合などにもぜひ使っていただきたい」と、地域との融合を目指していうという。

 さて、「フォルクスワーゲン世田谷」店は同社の店舗リニューアルのスタンダードである。残りの都区内にある店舗も順次改装される。その第二弾が、9月の「フォルクスワーゲン江戸川」の移転・全面改装オープンである。「今後も、リニューアルした店舗にも、イベント開催やスペースの解放を積極的に進めていきます。テーマは“地域にご奉仕”として、各店舗の個性を出したものを開催していきたいです。いかに地域の方に喜んでいただけるかを追求したいですね。フォルクスワーゲンのお店は、地域に密着して、末永くお付き合いいただき、地域の顔になるということが絶対でしょう」(林社長)とこれからの同社のあり方を熱く語っていただいた。
■ESの向上がCSの向上につながる−今後の施策

 また、「以前の営業スタイルは、営業所から営業マンがお客様のところへ訪問して関係をつくる。そのため、お客様はその営業マンしか知らずにクルマを購入していたケースが少なくなかったと思います。それに、そのころのショールームは、お客様をお連れしたい、またお客様が訪れてもいいと思うような空間ではなかったと思います。今回のリニューアルは、その部分をクリアしたと思います。これからは、お店という“器”が良くても、そこにいるスタッフの応対が良くなければ、お客様の支持は得られません。ですから、お客様にはスタッフの人柄、応対は当たり前、『フォルクスワーゲン世田谷』というお店が気に入ってもらいたいのです。
 例えば、ある営業マンを気に入ったお客様がご来店された場合、以前であれば、その営業マン以外のスタッフは“担当ではない”ということでそれほど熱心には応対していませんでした。しかし最近では、その営業マン以外のスタッフもきちんと応対できるようにスキルアップをしています。
 ではどうするのか。まず、ES(エンプロイヤー・サティスファクション:従業員満足。仕事環境や雇用条件、福利厚生などに対する従業員の満足度)の向上を図らなければなりません。そこで環境の良い仕事場で、お客様にも胸を張って「来てください」といえる環境を整えてあげることです。職場がこのようにきれいになると、スタッフの服装も立ち振る舞いもきれいになってきます。そうするとCSも向上していくという、いいサイクルが生まれてくると思います」と空間リニューアルが、そこで働くスタッフに与える好影響までのサイクル構造を、わかりやすく解説していただいた。

 そして、空間のリニューアルの目的のひとつに、フォルクスワーゲンのフルライン化、という品揃えが関係している。クルマ好きの読者の方はご存知だろうが、この2001年秋、同社の現在の商品ライン
 ● Lupo(1.4リットル)
 ● Polo(1.4〜1.7リットル)
 ● Golf(1.6〜2.0リットル)
 ● Passart(1.8リットル)
 ● New Beatle(2.0リットル)
 ● Bora(1.8〜2.8リットル)
という、いわば“普通車ライン”に加えて、Passrtの4.0リットルモデルが登場する。つまり、高級車を加えたフルラインを提供できるブランドに成長することを明言している。もちろん、お店もこれまでの機能一辺倒からフルライン・メーカーとしての余裕やグレード感にこだわった空間への脱皮を図ろうとするものだ。

 カーディーラーとは、クルマを販売する店舗である。店舗である以上は、お客様に気軽に足を運んでもらい、楽しく買い物をしてもらう・・・このような当たり前のことが、これまで行われていなかったという業態であったという反省に立つ。「フォルクスワーゲン世田谷」は、この当たり前のことを実行しようとしているのである。
 そして、ショールームという空間を活用できる自動車販売店ならではのメリットを活かした機能的イベントにより、お客様とより密接なコミュニケーションを取り、絆づくりをしていく・・・。実は「VW」は、我が国の輸入車市場では最大のインポーターである。そして「VW」というブランドは、クルマ好きでなくても大抵の日本人は認知している。こうしたブランド認知を、こういった地道な活動の繰り返しで、さらにポテンシャルをアップさせているのであろう。
                                           (編集部:Mt.1)


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