ワープステーション江戸

 江戸をテーマにした集客施設が新たに誕生した。茨城県筑波郡伊奈町に2000年4月21日オープンした「ワープステーション江戸」である。今回は、当施設の管理・運営主体である「株式会社メディアパークつくば」に取材をお願いし、開設の背景、コンセプト、運営などについてお話を伺うことができた。施設の訪問レポートとともに報告する。

 ※ワープステーション江戸を運営する(株)メディアパークつくばは、2002年7月25日、水戸地裁へ民事再生手続き開始を申請し、同地裁より保全命令を受けました。入場者数が当初の事業計画を大きく下回って推移し、2002年同期の来場者は約16万5000人と前年を大きく下回り、期末累損額は約12億4700万円にまで膨らんでいました。2002年4月に運営業務を「日光江戸村」を経営する大新東グループに委託していましたが、整備資金としての金融債務が重荷となり、返済見通しも立たないことから今回の措置となりました。
 ここに掲載していますレポートは、2000年9月28日にアップしたものです。(2002年7月31日)

 
●目次
1.整備の経緯
2.テーマは「江戸文化」
3.ネーミング
4.施設構成
5.事業スキーム

6.利用現況
7.メンテナンス等
8.飲食店・おみやげ

9.園内レポート
  江戸ワープ館  江戸ものしり館
  3Dドラマシアター 国際交流館  音の館
  華の浮世絵館  エレキ樽探検館  江戸妖怪館  黄門漫遊館
  その他  露店・おみやげ処  飲食店  その他イベントなど
10.サクセスストーリーのために


【施設概要】

●交通
常磐自動車道谷田部ICから約8キロ 車で15分
常磐線取手駅西口から約12キロ シャトルバスで約25分
●開園時間
夏期(4〜7月、9月〜10月) 9:30〜17:30
夏休み期間(7月20日〜8月31日) 9:30〜19:00
冬季(11月〜3月) 9:30〜16:30
●休園日 12月30・31日、1月1日の3日間
●入場料
一般個人 大人1,400円 子供(小・中)700円
一般団体 大人1,200円 子供600円
学生団体(15名以上) 高校・専門学校700円 子供500円
※入場料では江戸ワープ館・江戸ものしり館・3Dドラマシアター・国際交流館・ネオ中村座の5館が見られる。
ただし、ネオ中村座はイベントの内容により有料
●入館料
5館セット 個人・団体 大人・高校生1,000円 子供800円
単館券 共通300円
●面積 約5ヘクタール(東京ドームとほぼ同じ)



1.整備の経緯


 ワープステーション江戸は、茨城県の「メディアパークシティ事業」の一環として計画され、整備されたものである。この事業は「マルチメディアと自然を調和させた新しいまちづくりを実現させる」というもので、その計画は平成17年開通予定の常磐新線(仮称)の沿線計画の一つとして位置づけられている。将来有望な産業として期待できるマルチメディアを活用したまちづくり事業の具体化を図ろうとしている。
 そのメディアパークシティ事業は1〜3期に分けられており、この「ワープステーション江戸」はその第1期事業である。ちなみに、第2期は当該地区に県の中核施設としてマルチメディア関連の教育施設の整備を平成15年を目標に行い、第3期はマルチメディア関連の企業の研究所を誘致する計画である。この事業の主旨に賛同した企業60社が、茨城県、伊奈町が行政とともに参加し、第3セクター「株式会社メディアパークつくば」が設立され、ワープステーション江戸の運営主体となった。




常磐新線(仮称)計画路線図

 総事業費37億円のうち、茨城県が5億円、伊奈町が2億円、民間企業による出資額が23憶円、あとは借り入れによるもので、大部分を民間企業が担っていることになる。
 参加している企業は展示館も手掛けているNHKグループ・ソニー・松下電器産業・日立製作所・三菱電機・大日本印刷のほか、竹中工務店など大手建設会社、東京電力など全60社である。

2.テーマは「江戸文化」

 常磐新線の整備にともない、伊奈町にメディアパークシティを計画した経緯は、地域活性にあったのだが、実は我々の最大の関心事は、「なぜ、つくばで“江戸”なのか」にあった。
 コンセプト・メイクは、出資各社からの実務者会議の場で進められた。ここで着眼されたのが、国連による「国際平和の文化年」の提唱である。これは、“西暦2000年を21世紀の新たな幕開けの年として、自国文化の理解と他国文化の尊重による国際平和の樹立を目指すなかで、自国文化を再認識する”といった内容である。これを受け、日本の文化は、どこに原点を置くのが適当なのか、議論を重ねた。
 浮上したのが江戸時代である。それは、大陸の影響を大きく受けていた江戸時代以前よりも、鎖国していた約200年間にわが国固有の文化が醸成されたという見方である。そのまま、自国文化の原点を江戸時代に求める結論に至った。
 
 江戸の文化を現代人に認識してもらうには、江戸の町並みの再現だけでなく、同時代の文化・生活も現代人が再体験し、学習できる機会提供が必要になる。現代文化のルーツとなった江戸の再現方法として着目されたのが、マルチメディアそれも最先端の技術である。リアルで再現できない文化・風俗でも、音・映像のマルチメディア技術を駆使すれば、当時のリアリティを損なうことなく現代人に理解してもらえるというわけだ。
 もちろん、表現技術としてのマルチメディアの定義については意見が分かれた。現代人の最も身近なマルチメディアは携帯電話で、そのモバイルな感覚で表現すべきだ、あるいは定番でも映像と音での特色付けを発揮するべきだ等々である。
パンフレット

 国連の提唱を受けて検討したという点も意外だったし、鎖国の是非はともかく、西欧と趣を全く異にした日本固有の文化が生まれたのが江戸時代と言い切ってしまうのは、面白い発想である。しかし、ここでもうひとつの疑問、それがなぜ江戸東京ではなくてここ「つくば」の地なのかは残念ながら明確な回答は得られなかった。
 同社は第三セクターとはいえ、最初から出資者の長期に渡る援助を期待するような経営に関する甘い見込みは一切排している。江戸のテーマパークとして、独り立ちできる事業を標榜する。その姿勢には大きな拍手を送りたい。しかし現在、文化をテーマにした集客事業のサクセスストーリーを探すのは難しいのが実状である。
 文化は一人一人受け止め方が異なる。さらに施設への期待や過ごし方を特定層に規定するのも大きな冒険である。収益性を求めると、全方位外交が必要で、要するに子供からお年寄りまで楽しめるという曖昧な機能構成になってしまうのだ。文化への執着は必要だが、ある程度娯楽的な仕掛けもないと、お客が来ない。ましては江戸と無縁な土地での江戸文化再興はインパクトに欠けてしまうだろう。江戸をどのようにして表現していくか、これが事業の成否を握っていると判断、内容構築に最も尽力かつ苦労したという。
 テーマパークの「テーマ」の決定には、様々なシステムがあるとは予想していたが、後付的・便宜的な歴史解釈であってもそれほど問題はないとは驚きである。

3.ネーミング

 「ワープステーション江戸」という名称についても、決定まで議論噴出だった。本来「ワープ」というのは、ねじれる、という意味でどちらかというとネガティブな意味合いのなのだが、日本ではSFやアニメなどで「時空間を移動する」という意味で浸透していると判断し、割り切って決められたとのことである。

次へ

ライン


※最近、ワープステーション江戸についてのメールを多数お寄せ頂いておりますが、
ご質問等はこちらでは回答できませんので、
直接ワープステーション江戸にお問い合わせ下さい。


トップ