ゴールドパーク串木野

  〜記憶に残したい南国の“ゴールド・マインパーク”〜

 本社既刊『レジャーパークの最新動向2002』(平成14年9月発行)で取り上げた、三井串木野鉱山(株)が経営する「ゴールドパーク串木野」(鹿児島県串木野市)は、業績の低迷を理由として本年(平成15年)9月末をもって閉鎖となった。

 同所は、およそ350年の歴史をもつ金山の坑道を集客事業として再利用したマインパークで、団体客にフォーカスした施設内環境づくり、あるいは串木野市エリアの観光地と連携した面的な名所づくり、さらには九州の西海岸をエリアとする周遊観光コースづくり等の努力で、積極的に観光客の誘致を図っていた。もちろんマインパークとしても、他にはない金山の休坑を利用した本格的なもので、地底の坑道での「金」をテーマとした数々のプレゼンテーション、例えば「黄金のインゴット」、「黄金の棺」等は見る者に強烈なインプレッションを与えていた。坑道体験を謳っても地下空間体験以外の面白みに欠ける嫌いのある日本のマインパークだが、こうした同所のエンターテイメントは画期的なレベルにあったといえよう。

 総じて地方のレジャー系集客施設は、集客難に悩んでいる。「ゴールドパーク串木野」は、その経営に行政が口を出すことなく(逆に言えば観光宣伝等の行政としてのフォローがほとんど行われないまま)、純粋に民間会社のマネジメントであった。よって、集客目標に対する達成が事業評価に直結する。残念ながら、アイデアを次々と具体化して、団体を中心に入り込み増を図ろうとする施策も、目の前の累積赤字や親会社の三井鉱山そのものの停滞等から、時間切れとなってしまった。

 大都市には無名で、しかも鉱山観光のように“超地味”な集客テーマながら、造作や雰囲気づくり等、そのポテンシャルは他を圧倒していた。それは、「金」をコンセプトとして体系づけられた統一性の下、妙にフィクションに走ることなく、本来の金の採掘のための坑道環境を直視して、その現実を産業史の視点からわかりやすく表現。その上で金をテーマとしたエンタメ的演出を加えていたからである。また、見るだけ・触れるだけではない。パーク内に設けられた「黄金資料館」では、本物の金のインゴット12.3kgを実際に手にする体験コーナーや、来場者のアクセサリー小物類を実際に金メッキしてくれるサービス(有料、500円)は大人気であった。
 そして、同所のマネジャーである田畑和彦支配人の企画力と行動力は、マネジメントに消極感・沈滞感漂うマインパークが多い中で、群を抜いていた。上記の集客施策のほとんどは田畑氏が自らプランニングして、実現させた結果である。

 九州でいえば「シーガイア」(宮崎県宮崎市)や「ハウステンボス」(長崎県西彼杵郡)のように、経営が破綻しても地域における経済的影響から、会社更生法を適用して新たなスポンサーのもとで再生を図ろうとする集客事業もある。また、福岡県北九州市小倉北区の「到津遊園」のように、民間会社が経営を断念して廃園したものを市が運営主体となって再生させた「到津の森公園」のような例もある。また「ケーブルラクテンチ」(大分県別府市)のように、閉園の意向が発表されてから、市民の存続を願う署名活動等により行政(別府市)が最大限の支援を約束した施設もある。
 そうした状況を見ると、ゴールドパーク串木野の8月発表→9月末閉園という早急な“処理”は、施設のポテンシャルから見て、もっと検討時間を設ける等、何とかできなかったのだろうか。本当に残念なことである。
 冷夏に祟られた最後のシーズンは、閉園を惜しむ多くの人々で賑わった。惜別の意を込めて、以下に『レジャーパークの最新動向2002』で紹介したゴールドパーク串木野についてのレポートの全文をここに掲載する。集客施設運営に携わる実務者を対象とした編集だが、後半の「5.訪れてのインプレッション」は一般の方にもその雰囲気がおわかり頂けるだろう。

本社既刊『レジャーパークの最新動向2002』(平成14年9月発行)のレポートを掲載します。〜


ゴールドパーク串木野

鹿児島全体の観光入込を母数に、誘致可能性を検証
団体客に特化し、個人向け宣伝コストを削減
さらに「金」に掛けたオリジナルツアーコースを開発、年間を通じて安定集客

−目次−
概要
1.施設整備の背景 〜事業多角化を目指し観光事業に参入
2.現況 〜団体客誘致で冬季の集客が増加
3.運営 〜金相場動向から現在は休業中
4.集客 〜自ら考えたアイデアを次々と具体化
5.インプレッション(1)
 ・地下ステーションは坑道の雰囲気十分
 ・リアルなマネキンの表情から伺える過酷な作業
 ・音声解説は共鳴がひどくマグシーバーが必要
 ・バリアフリーに対応した順路設定
5.インプレッション(2)
 ・ツタンカーメンの「黄金の棺」・・・わかりやすい
 ・洒落が効いている「金運神社」
 ・見せ場のひとつ「黄金のインゴット」
 ・現場の緊張感が伝わってくる「生きた坑道」
 ・リアリティを持たせた発破体験と機械の稼働
 ・トロッコ電車を待つ間に土産品を購入できる
5.インプレッション(3)
 ・わかりやすく、興味を覚えやすい資料展示
 ・好評の「純金メッキ実演コーナー」
 ・テナント誘致により屋外空間を整理する計画
 ・団体の予約で準備に多忙なレストラン
6.活性化のために
7.カーフェリー「マダム・バタフライ」


−概要−
所在地:鹿児島県串木野市下名13665番地
電話:0996-32-5689
入園料:大人1,300円、中・高校生1,000円、小人
 (3才〜小6)800円 (団体は30名以上10%
 割引、遠足・修学旅行は50%割引)
砂金採り体験 900円 純金メッキ加工 500円〜
営業時間:9:00〜17:00(入園16:00まで)
休園日:6・7・9・12月 毎週水曜日
 (7月は第1・2・3水曜日、12月は第3・4水曜日)
交通:公共交通利用の場合 
 JR鹿児島本線串木野駅下車 車で5分
   車の場合 鹿児島市内より車で約60分
坑道の長さ:120m
ホームページ:http://www.goldpark.co.jp/



 昭和63年(1988)にオープンした、「ゴールドパーク串木野」(鹿児島県串木野市)は、およそ350年の歴史を持つ三井串木野鉱山の坑道を再利用したエンターテイメント施設で、実際に操業中の鉱山を利用したマインパークとしては日本唯一の施設である。運営は子会社の串木野鉱山観光(株)が当たっている。

 バブル期に、鉱山の将来性と従業員の再就職先確保を視野に計画されたマインパーク事業だが、初年度のオープン効果も長続きせず、その後は広告宣伝費や人件費の抑制等内向きの施策で経営改善を図ってきた。

 ジリ貧を解消したのは、集客ターゲットを個人から団体に移したことが契機となった。また、同社田端和彦支配人の発想から、同所の「金」と、周辺地域の観光資源をネットワークして話題を喚起、集客につなげるツアーメニューづくりにも取り組み、これも人気を集めている。


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